新生児の世話で昼と夜の区別がなくなっているあいだに、児童手当の申請期限は過ぎていく。出生の翌日から15日以内。乳幼児医療証も出産育児一時金も、それぞれ別の書類と別の期限で動いている。1歳までのお金は、この最初の数日の段取りしだいで受け取れる額が変わる。
1歳までの1年間は、お金の出入りが月によって大きく波打つ時期だ。公的に受け取れるお金と、自分で負担する費目を分けて把握しておくことが、家計を乱高下させないための近道になる。受け取れる側は制度で金額が決まっているため見通しが立てやすい。負担する側は季節や子どもの体格、育児方針によって差が出やすい。まずはこの2つを混同せず、別々の枠で捉えることから始める。
公的に受け取れるお金
0歳から1歳の時期に関わる公的な給付・助成は主に4つある。出産時の一時金、毎月の児童手当、医療費の助成、そして育休中の給付だ。いずれも自分で申請しない限り支給されない仕組みになっているため、金額だけでなく期限も合わせて押さえておく必要がある。
出産育児一時金は50万円
出産にかかる費用をまかなう目的で、健康保険から出産育児一時金が支給される。金額は令和5年4月から引き上げられ、原則50万円だ。妊娠4か月(85日)以上の出産であれば、出産方法や出産場所を問わず支給の対象になる。多くの病院では「直接支払制度」により、健康保険から病院へ直接支払われる。退院時に窓口で支払う金額は、出産費用から50万円を差し引いた差額のみで済む場合が多い。制度の詳しい範囲は厚生労働省「出産育児一時金等について」で確認できる。
児童手当は3歳未満が月15,000円
児童手当は0歳から高校生年代までの児童を養育している場合に支給される。月額は3歳未満が15,000円、3歳以上高校生年代までが10,000円で、第3子以降はいずれの年齢でも30,000円になる。支給は偶数月の年6回、前月までの2か月分をまとめて振り込む方式だ。出生日の翌日から15日以内に現住所の市区町村へ申請しないと、原則として遅れた月分は受け取れなくなる。里帰り出産で一時的に現住所を離れている場合でも、申請先は現住所の市区町村のままである点は見落としやすい。詳細はこども家庭庁「児童手当制度のご案内」に一覧で掲載されている。

医療費助成は自治体ごとに違う
乳幼児の通院・入院にかかる医療保険の自己負担分は、多くの自治体で助成の対象になっている。対象年齢や所得制限の有無、自己負担額の設定は自治体ごとの独自事業として運用されているため、全国一律ではない。例えば東京都の乳幼児医療費助成(マル乳)は、6歳に達する日以後の最初の3月31日まで、つまり義務教育就学前の乳幼児が対象で、医療保険の自己負担分を助成する仕組みだ。健康診断や予防接種、差額ベッド代など医療保険の対象外となる費用は基本的に助成範囲に含まれない点も、事前に知っておきたい。自分の住む自治体の条件は、出生届を出すときに窓口で確認するのが確実だ(東京都の制度は東京都福祉局「乳幼児医療費助成制度(マル乳)」を参照)。
育休中の給付は最大8割相当
子を育てるための収入面の支えとして、雇用保険から育児休業給付金が支給される。令和7年4月からは新たに出生後休業支援給付金が創設された。子の出生直後の一定期間内に、原則として両親がともに14日以上の育児休業を取得すると、最大28日間、休業開始前の給与の13%が上乗せされる。育児休業給付とあわせた給付率は80%になり、社会保険料が免除される効果を含めると手取り10割相当が支給される。上乗せ分は両親双方の育休取得が原則の条件になるが、ひとり親の場合など一定の要件に当てはまるときは、配偶者が育児休業を取得していなくても支給対象になる。制度の詳細は厚生労働省「出生後休業支援給付の簡易診断(要件確認)ツール」で確認できる。

自己負担が増える費目
公的な受け取りに対して、自己負担する費目は品目も金額も家庭によって差が大きい。国立成育医療研究センターが2025年に公表した調査によると、衣類・食費・生活用品などの生活費は年齢とともに一貫して増加し、年間費用に占める割合は常に半分程度を占めている。ただし0歳の1年だけを費目別に切り出した公的な平均統計は見当たらない。そのためこの記事では具体的な平均額を示すのではなく、費目ごとに何が変動要因になるかを整理する方針にした(調査の詳細は国立成育医療研究センター「0歳~高校3年生の子育てにかかる年間費用の調査結果」を参照)。育休中の収入減も含めて世帯全体の手取りを考えると、生活費の増加はいっそう実感しやすくなる。
授乳方法で差が出るミルク代
母乳育児か、粉ミルク・液体ミルクを併用するかによって、月々の負担は変わる。粉ミルクは月齢が上がるにつれて飲む量が増えるため、生後2〜3か月頃から出費が目立ち始める。離乳食が進む生後6か月以降は、少しずつミルクの割合が減っていく家庭が多い。哺乳瓶や消毒グッズなど授乳まわりの道具は、最初の数か月に集中して購入することになりやすい。粉ミルクと液体ミルクでは1回あたりの単価も違うため、外出時だけ液体ミルクを使うといった使い分けもできる。
おむつ・衣類はサイズ替えで出費
おむつは月齢が上がるにつれてサイズが変わる。そのたびに買い置きが無駄になったり、逆に買い足しが必要になったりする。衣類も新生児期・3か月頃・6か月頃・1歳前後でサイズが大きく変わるため、季節の変わり目と重なると出費がまとまりやすい。冬生まれか夏生まれかによって、必要な肌着や上着の枚数も変わってくる。おさがりや譲り受けを活用する家庭もあれば、成長記録を兼ねて毎回新調する家庭もあり、この費目は方針の差がそのまま金額の差になりやすい。
ミルク・おむつ・衣類の三つのうち、自分の家でいちばん読みにくいのはどれだろうか。
まとまった出費が出る時期
ベビーベッドやチャイルドシート、ベビーカーなど大型のベビー用品は、出産前後にまとめて購入する家庭が多い。お宮参りや初節句、初誕生祝いといった行事のたびに、衣装や食事、写真撮影などの費用が発生することも見落としやすい。こうした行事関連の出費は毎月ではなく特定の時期に集中する。月ごとの家計簿だけを見ていると、急な支出のように感じてしまいやすい。あらかじめ行事の時期を年間の予定表に書き出しておくと、当日になって慌てる回数を減らせるはずだ。
定期予防接種は原則として自己負担がない。一方で任意接種(インフルエンザなど)は実費になる場合が多く、これも医療費助成の対象外になりやすい費目のひとつだ。どこまでが公費で、どこからが自己負担なのか、通っている小児科や自治体の窓口で予防接種のスケジュール表をもらうときに、あわせて確認しておくと後から慌てずに済む。里帰り出産と接種時期が重なる場合は、里帰り先の自治体でも接種できるかどうかを事前に問い合わせておくと安心だ。
月齢ごとの目安
ここまでの内容を月齢の流れに沿って整理すると、大きく三つの時期に分かれる。
0〜2か月:出産育児一時金の受け取り手続きと、児童手当・医療証の申請が集中する時期。ベビー用品の初期購入も重なりやすい。
3〜8か月:ミルク代やおむつ代など、日々の消耗品費が安定して発生する時期。離乳食の開始で食費の内訳が変わり始める。
9〜12か月:衣類のサイズアップや初誕生祝いなど、行事関連の出費が重なりやすい時期。歩き始める子もいて、靴や安全グッズの購入が加わることもある。

申請のタイミングを逃さない
児童手当も医療証も、申請が遅れるほど受け取れる金額が実質的に目減りする点は共通している。出生届を出す当日に、児童手当・乳幼児医療証・(加入していれば)健康保険の被扶養者手続きをまとめて済ませておくと、後から役所に何度も足を運ぶ手間を減らせる。里帰り出産の場合は、申請先が現住所の市区町村のままであることを事前に確認しておくと当日慌てずに済むはずだ。育休給付の上乗せを狙うなら、パートナーの育休取得時期を出産前から相談しておく必要がある。夫婦のどちらが窓口に行く場合でも、母子手帳・本人確認書類・保険証・振込先口座の分かるものはひとまとめにしておくと安心だろう。

行動チェックリスト
1歳までの1年間、最初に手をつけておきたい項目を並べる。
- 出生届と同じ日に児童手当・乳幼児医療証の申請書を出す
- 出産育児一時金は直接支払制度を使うか事前に病院へ確認する
- 自治体の医療費助成の対象範囲(予防接種は対象外など)を確認する
- 育休給付の上乗せ要件(両親とも14日以上の育休取得)を出産前に確認する
- 行事(お宮参り・初節句・初誕生)の時期を年間予定表に書き出しておく
- ミルク・おむつ・衣類のサイズアップ費用は月ごとの家計簿とは別枠で見ておく

受け取れるお金は制度どおりに淡々と申請し、負担する費目は月によって波があるものだと最初から見込んでおく。それだけで、1歳の誕生日を迎えるまでの1年間、家計の見通しはずいぶん立てやすくなるのではないだろうか。
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※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、特定の商品・サービスの利用を推奨するものではありません。制度の内容や金額は変更される場合があるため、最新の情報は各制度の公式ページや、お住まいの市区町村窓口でご確認ください。個別の家計状況に応じたご判断は、必要に応じてファイナンシャルプランナーなど専門家にご相談ください。
