離乳食にかかるお金、市販品と手作りの内訳

台所の調理台に、小さな鍋と裏ごし用のこし器、製氷皿の形をした冷凍トレーが並んでいる。にんじんを一本ゆでて、すりつぶして、小分けにして凍らせる。一連の作業が終わるころには、食洗機に入れる道具が四つ増えている。

棚には、開ければそのまま出せる瓶詰めも置いてある。手作りと市販品、どちらか一方に決めている家庭は、実はそれほど多くない。

目次

比べることになったきっかけ

離乳食が始まると、多くの家庭が同じ場面に行き当たる。裏ごしや刻みには毎回時間がかかる。市販品なら開けてそのまま出せる。時間をかけて手作りするか、市販品に頼るか、あるいはその両方を組み合わせるか。

比べる対象は「手作りだけ」「市販品だけ」の二択ではない。実際には、その間に無数の配分がある。

離乳食は、つぶした野菜やおかゆをスプーン一さじから始める段階から、品目と量が少しずつ増えていく。この変化に合わせて、手作りと市販品の配分も動いていく。子どもの食べ方や好みも週単位で変わるため、配分を一度決めて終わりにできる性質のものではない。

条件をそろえて比べる

今回そろえた条件は三つである。対象は離乳食期、場面は平日の食事づくり、比較する軸は「準備方法の配分」「市販品を使う頻度」「困りごとの中身」「1食あたりの価格」の四つに絞った。

味や栄養価そのものの優劣は対象にしていない。あくまで、時間とお金の使われ方を数字で見ていく。

もう一つそろえておきたい条件がある。同じ「市販品」でも、瓶詰め、レトルトパウチ、フリーズドライ、粉末やキューブタイプなど、形状によって価格も使い勝手も違う。今回は、価格が確認しやすい瓶詰めタイプと、主菜・副菜がセットになったボックスタイプを中心に見ていく。

離乳食の手作りと市販品を比べる際の対象と、そろえた条件・比較軸の整理図
比較の対象と条件の整理 ※概念図(実測データではありません)

手作りだけにしなかった家庭が多数派

育児用品メーカーのピジョンが2025年10月に実施した「離乳食」についてのアンケート(離乳食に関する設問の回答者はn=8,639)によると、離乳食の準備方法は「手作りと市販品を半々くらいで利用している」が52.4%ともっとも多く、「主に手作りしている」29.8%、「主に市販品を利用している」17.8%と続いた。

調査は、半々派と市販品中心派を合わせて、7割以上が市販品を積極的に利用していると総括している。毎回手作りを貫く家庭は、少数派に入る。

離乳食の準備方法の内訳を示す円グラフ。半々くらい52.4%、主に手作り29.8%、主に市販品17.8%
離乳食の準備方法の内訳(n=8,639) ※ピジョン「離乳食についてのアンケート」を基に作成

この結果は、離乳食づくりが「手作りか市販品か」の二択ではなく、配分の問題であることを裏づけている。

自由回答にも、その配分の姿が出ている。全部作るのは家庭のリソース的に厳しいと考えて手作りへの執着をやめた、裏ごしが大変な葉物野菜やとうもろこしはベビーフードに頼っている、外出のときはベビーフードにしてエプロンも紙にした。どれも、手作りをやめた話ではなく、置き換える場面を決めた話である。

市販品はどれくらいの頻度で使われているか

同じ調査では、市販のベビーフードを利用する頻度も尋ねている。もっとも多かったのは「ほぼ毎日」で28.3%。次いで「週に2〜3回」「週に4〜5回」と続き、調査は7割近くが週に複数回利用していると整理している。逆の端にある「ほとんど使わない」は、選択肢の中で最も少なかった。

市販品は、特別な日だけのものではない。日常の一部として定着している。

市販ベビーフードの利用頻度を示す横棒グラフ。ほぼ毎日28.3%を筆頭に7項目を降順に並べたもの
市販ベビーフードを利用する頻度(n=8,639) ※ピジョン「離乳食についてのアンケート」を基に作成

使う場面については、離乳食から幼児食へ移った層への設問がある。「時間がない時の一品として」が76.7%でもっとも多かった。以下、「大人用の食事からの取り分けが難しい時の代わりとして」「自分では作りにくいメニューの時に」が続く。時間そのものよりも、手が届きにくい料理を埋める使い方が上位に並んでいる。裏ごしが大変な食材ほど、市販品に置き換える対象になりやすい。

困りごとは何から生まれるか

厚生労働省の平成27年度乳幼児栄養調査(0〜2歳児の保護者1,240人が回答、複数回答)では、離乳食について困ったことの1位は「作るのが負担、大変」で33.5%だった。以下、「もぐもぐ、かみかみが少ない(丸のみしている)」「食べる量が少ない」「食べものの種類が偏っている」が続く。何らかの困りごとを挙げた保護者は74.1%にのぼり、特にないと答えた層の方が少なかった。

もっとも多い困りごとは、味や栄養ではなく「作る手間」そのものである。市販品を併用する動機は、ここに直結している。

離乳食で困ったことの内訳を示す横棒グラフ。作るのが負担・大変が33.5%で最多
離乳食について困ったことの内訳(複数回答・n=1,240) ※厚生労働省「平成27年度乳幼児栄養調査」を基に作成

では、市販品を使うことに後ろめたさはないのか。ピジョンの調査で抵抗感を尋ねた設問では、「全く抵抗はない」が69.4%、「どちらかといえば抵抗はない」が24.9%で、調査は9割以上が抵抗を感じていないとまとめている。負担感の高さに比べて、心理的なハードルは低い。

一方で、「どちらかといえば抵抗がある」と答えた人も5.6%いる。多数派ではないが、ゼロでもない。市販品の側にも、割り切りきれない部分は残っている。

非常時に備えて食品を多めに買い置きし、消費しながら買い足す「ローリングストック」についても、同じ調査が尋ねている。「知っていて実践している」42.4%、「知っているが実践はしていない」35.1%で、言葉自体を知っている人は8割近い。ローリングストックの対象として選ばれやすい食品の1位は市販のベビーフードだった。保存のきく市販品は、日々の負担軽減だけでなく備えの面でも選ばれている。

手作り側にある利点と負担

手作りの側にも、数字で確かめられる利点がある。ピジョンの調査で離乳食や幼児食の悩みを尋ねた設問では、「栄養バランスが取れているか不安」が75.5%で最多だった。何がどれだけ入っているかが見えていることは、この不安に対する一つの答えになる。大人の食事から取り分けられれば、作る手間も一度で済む。

自由回答にも、一人目は大人と別に作っていて大変だったので二人目はなるべく取り分けにした、という声がある。

ただし負担は残る。同じ設問では「毎日のメニューがマンネリ化してしまう」が67.1%、「調理に手間や時間がかかる」が52.5%を占めた。手作りの負担は、味や栄養より前に、続けることそのものにかかってくる。

みじん切り調理器を毎日使う。休日にまとめて1週間分を冷凍する。自動調理鍋で大量に作る。寄せられた工夫は、どれも手作りをやめずに時間だけを削る方向を向いていた。

価格で見るとどうなるか

次に、1食あたりの価格を見ていく。アカチャンホンポのオンラインショップでキユーピーの離乳食を検索した結果を見ると、瓶詰めタイプの「こだわりのひとさじ」は掲載されている7品がいずれも203円。主菜と副菜がセットになった「にこにこボックス」は311円から388円だった(いずれも税込・2026年9月2日時点)。

手作りの場合の1食あたりの材料費を示す公表データは見当たらなかった。ここは数字で比べられない領域になる。

旬の野菜をまとめてゆでて冷凍する分には、材料費は抑えやすい。一方で、離乳食用にだけ使う調味料や、少量パックの食材を都度買い足す進め方だと割高になる場面も出てくる。まとめ買いと使い切りの計画が立てられるかどうかで、実際の材料費は変わる。

市販ベビーフードの1食あたり掲載価格を示す横棒グラフ。セットタイプ311〜388円、瓶詰めタイプ203円
キユーピー離乳食の1食あたり掲載価格(税込・2026年9月2日時点) ※アカチャンホンポ Online Shop「キユーピー 離乳食の検索結果」を基に作成

価格だけを見て「手作りの方が安い」と決めつけるのは早い。刻む、裏ごしする、小分けにして凍らせる。この一連の作業には、確実に時間というコストがかかっている。

下ごしらえの時間を、外食や総菜に置き換えたときの金額と並べてみると、手作りが「無料」ではないことが見えてくる。時間を金額に換算する発想を持ち込むと、価格表だけの比較では見えなかった差に近づける。

使い分けの結論

頻度が上がるほど、費用の差は本当に大きくなるのか。ここまでの数字を並べると、答えは一つに定まらない。多数派が選んでいるのは、手作りか市販品かという二択ではなく、場面ごとの使い分けだった。

時間がない平日の夕方には市販品、週末にまとめて仕込む日には手作り。この配分は、費用よりも「そのとき使える時間」に合わせて決まっているように見える。

出先で使うか、家で使うかによっても向き不向きが分かれる。持ち運びやすさを優先するなら個包装のパウチや粉末タイプ、家で品目を増やしたいときは瓶詰めを常備しておく、という組み合わせになる。

場面別に見た離乳食の手作りと市販品の使い分けマップ
場面別の使い分けマップ ※概念図(実測データではありません)

調理台の前で迷う時間そのものが、配分を決める最初の一歩になっている。迷うことは、悪いことではない。

手作りにこだわりすぎて疲弊してしまう例も、市販品だけに頼って栄養バランスが気になってしまう例も、どちらも珍しくない。極端な方針を最初から決め打ちするより、月齢が上がるにつれて配分を見直していく方が、続けやすい形に落ち着きやすい。

離乳食が完了期に近づけば、大人の食事から取り分ける割合が自然と増えていく。市販品の出番も、そこで少しずつ形を変えていく。ずっと同じ配分を保つ必要はない。そのときどきの余力に合わせて動かしていく前提で考えると、比べる作業そのものの負担も軽くなるはずだ。

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月齢ごとの見通しを立てたい場面では、育児の総合リファレンスとして読み継がれてきた『定本 育児の百科』(松田道雄)が挙げられることが多い。離乳食に限らず、迷ったときに引く一冊という位置づけの本である。

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本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の商品や方法を推奨するものではありません。掲載した価格や統計は調査時点のものであり、変更される場合があります。離乳食の進め方について不安がある場合は、自治体の相談窓口や医療機関にご相談のうえ、各家庭の状況に応じてご判断ください。

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この記事を書いた人

4人家族で妻、息子、娘で関西に新築建てて住んでいます。日々、家族の要望に応えられるように未来に関係しそうなことやお金に関すること調べてこっそり、生活に取り入れています。

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