認可外保育園、一時保育と企業主導型の費用を比べる

公園のベンチで、子どもを砂場で遊ばせながらの立ち話に、こんな一言が挟まることがある。「今日は下の子の健診で、一時保育に預けてきたんです」。相づちを打ちながら、一時保育という制度の名前は知っていても、費用や申し込みの流れまでは会話が続かないまま終わる。

認可保育園に入れなかったときや、フルタイムではなく週に数日だけ預け先が欲しいとき、選択肢は一時保育だけではない。企業が国の助成を受けて運営する企業主導型保育、そして届出だけで開ける認可外保育施設一般。名前は知っていても、費用の決まり方はまったく違う。三つを同じ条件で並べてみると、それぞれの得意な場面が見えてくる。

目次

三つの選択肢と比べる条件

ここで比べる三つは、一時保育(一時預かり事業)、企業主導型保育、そして認可外保育施設一般である。

一時保育・企業主導型保育・認可外保育施設一般の3類型を運営主体・対象事由・継続利用で比較した表
3類型の比較条件 ※概念図(実測データではありません)

年齢は0〜2歳児クラス、就労などで保育の必要性が認められる世帯を想定する。費用にかかわる部分は、自治体や国が公表している一次情報のみを使う。施設ごとの実勢価格は幅が大きい。そのため、ここでは「費用がどう決まる制度か」という構造の違いに絞って整理する。

認可保育園の保育料そのものについては、保育料はいくらかかるかで扱った。今回の三つは、いずれもその外側にある選択肢という位置づけになる。認可の枠に入れなかったときや、フルタイムではない働き方のときに、初めて名前が挙がる制度である。

三つを比べる意味は、単に安さを競わせることではない。運営主体が国か自治体か施設かによって、料金の決まり方と使える場面がまったく違う。そこを先に押さえておくと、目の前の選択肢がどの位置づけなのか、迷わずに判断できる。

一時保育の費用と使い勝手

一時保育(一時預かり事業)は、日単位・時間単位で子どもを預かる制度である。実施主体は市区町村になる。

さいたま市公立施設の一時保育料金を年齢区分別に示した表
さいたま市 一時保育(公立)の料金 ※さいたま市「一時預かり(一時保育)」を基に作成

例えばさいたま市では、公立施設の料金が公表されている。1〜2歳児は1日2,000円。3〜5歳児は1日1,950円である。公立以外の施設については「施設によって異なります」とされ、市の公表値はない(さいたま子育てWEB「一時預かり(一時保育)」)。同じ市内であっても、公立の日額をそのまま当てはめることはできない。

対象となる事由には枠がある。さいたま市の案内では、両親の病気や入院、災害、事故等により緊急・一時的に家庭での保育ができないとき、週3日以内の仕事を持ち断続的に保育ができないとき、リフレッシュしたいとき(月1回のみ)と示されている。何にでも使える制度ではない。

使い勝手の面では、急な用事に対応できる反面、人気の枠は予約が埋まりやすい。希望した日に必ず預けられるとは限らない。定期的な利用を前提にした制度ではないため、週3日以上の継続利用を考えるなら、次に見る企業主導型保育や認可外保育施設一般のほうが向く場面もある。手続きは直接施設に申し込む形で、市が窓口を一本化しているわけではない点にも注意がいる。

企業主導型保育の助成のしくみ

企業主導型保育は、事業主拠出金を財源として、従業員の多様な働き方に応じた保育を提供する企業等を支援する事業である。待機児童対策に貢献することを目的として、平成28年度に創設された(こども家庭庁「仕事・子育て両立支援事業」)。

基本分単価の総額から利用者負担相当額を控除して利用者負担額が決まる流れを示した概念図
企業主導型保育の助成の流れ ※概念図(実測データではありません)

位置づけは認可外保育施設だが、運営費・整備費について認可施設並みの助成が受けられる点が、届出だけの施設と違う。

保護者が支払う額の決まり方は、助成の流れを追うとわかりやすい。

施設には「基本分単価」が交付される。金額は、地域区分・定員区分・年齢区分・保育士比率の組み合わせで決まる。企業主導型保育事業費補助金実施要綱では、この基本分単価の総額から「利用者負担相当額」の総額を控除した額が交付される仕組みになっている。利用者負担相当額は、利用者負担額の平均的な水準として設定されている額である。そのため要綱は、これをそのまま利用者負担額とすることを原則とし、必要以上に超えて高額にしないよう定めている(企業主導型保育事業費補助金実施要綱)。企業が福利厚生として負担を引き下げることも、要綱で認められている。

定員の内訳にも条件がある。自社従業員枠は、施設の利用定員の10%以上を確保しなければならない。地域枠(従業員枠以外の児童)には、施設の利用定員の50%以内という上限がある。地域枠だけを頼りに入所を考えると、施設によっては空きが読みにくい構造だと分かる。

申し込みの窓口を比べる

費用と並んで見落としやすいのが、申し込みの窓口である。一時保育は、実施する施設に直接申し込む形が基本になる。自治体が実施園の一覧を公開してはいるが、受付そのものは施設ごとに行われる。

企業主導型保育も、窓口は各施設になる。従業員枠は勤務先を通じて案内が回ってくるが、地域枠については施設に直接問い合わせる必要がある。認可外保育施設一般も同様に、施設ごとの直接申込みが基本である。三つとも、市区町村の一括窓口を経由しない点は共通している。認可保育園の入園申込みとは、そこが大きく違う。空き状況の問い合わせだけでも、複数の施設に連絡する手間がかかることは覚悟しておきたい。

無償化で軽くなる範囲

三つはいずれも幼児教育・保育の無償化の対象になりうる。ただし、対象になる筋道は同じではない。

認可外保育施設等と企業主導型保育それぞれの無償化の対象と軽減の範囲を示した表
無償化の対象と軽減の範囲 ※こども家庭庁「幼児教育・保育の無償化概要」を基に作成

一時保育と認可外保育施設一般は、「認可外保育施設等」の枠に入る。3〜5歳児は月額3.7万円まで、0〜2歳児の住民税非課税世帯は月額4.2万円までの利用料が無償化される。対象となる施設・事業には、認可外保育施設に加えて一時預かり事業、病児保育事業、ファミリー・サポート・センター事業が含まれる(こども家庭庁「幼児教育・保育の無償化概要」)。

企業主導型保育は、この枠とは別立てになっている。3〜5歳児は保育の必要性のある子ども、0〜2歳児は住民税非課税世帯であって保育の必要性のある子どもについて、「標準的な利用料」が無償化される、という書き方になっている。3.7万円・4.2万円という金額で線を引く仕組みではない。

手続きの入り口も分かれる。認可外保育施設等と一時預かり事業では、市区町村から「保育の必要性の認定」を受ける必要がある。要件は認可保育所の利用と同等の就労要件などで、認定を持たないまま利用しても軽減は適用されない。企業主導型保育の場合は、利用している施設に対して必要書類を提出することが条件になる。

同じ「無償化」という言葉でも、入り口が二種類ある。

認定の申請先は、居住地の市区町村である。就労証明書などの提出書類は、認可保育園の入園申込みで使うものと重なる部分が多い。すでに書類をそろえた経験があれば、大きな手間は増えない。初めて申請する場合は、必要書類をそろえる時間を余裕をもって見込んでおきたい。

週3日利用の月額を試算する

条件をそろえるため、1〜2歳児が週3日、一時保育を利用した場合を試算してみる。

一時保育を週3日・週5日利用した場合の月額試算と4.2万円の上限との関係を示した表
週の利用日数別・一時保育の月額試算 ※さいたま市公表の日額料金を基に筆者が試算

さいたま市公立の日額2,000円を使う。1か月を4.3週とすると、2,000円×3日×4.3週で25,800円になる。

ここで、比べる前の見込みとは違う結果が出た。25,800円は、0〜2歳児の無償化の上限である月額4.2万円の内側にある。住民税非課税世帯で保育の必要性の認定を受けているなら、この範囲は軽減が届く側にある。上限額は「そこまで自己負担が要る」という線ではなく、「そこまでは軽減が届く」という線だった。逆に、非課税世帯でない場合や認定がない場合は、25,800円をそのまま負担することになる。

週5日まで日数を伸ばすと、景色が変わる。2,000円×5日×4.3週で43,000円。4.2万円の上限を1,000円だけ超える。超えた分は軽減の外に出る。

企業主導型保育と認可外保育施設一般は、施設ごとに料金が決まる。そのため、同じ精度の試算はできない。ただし企業主導型保育には、交付額から利用者負担相当額を控除し、その利用者負担相当額をそのまま利用者負担額に据えるという原則がある。月極で継続利用するなら、日割りで積み上がる一時保育より、月々の見通しは立てやすい。認可外保育施設一般は料金の自由度が高く、立地や保育内容によって振れ幅が大きくなる。

使い分けの結論

三つを並べてみると、役割分担が見えてくる。

利用場面別に一時保育・企業主導型保育・認可外保育施設一般の使い分けを示したマップ
利用場面別の使い分けマップ ※概念図(実測データではありません)

急な用事への対応は一時保育。継続的な月極利用でコストを抑えたいなら、企業主導型保育の地域枠。そのどちらにも当てはまらない場合の受け皿が、認可外保育施設一般になる。

認可外保育施設一般は、選択肢の幅が広い。では、何を基準に選べばよいのか。保育内容や立地、開所時間のどれを優先するかで、向いている施設は変わってくる。家庭ごとの条件によって答えが変わる部分だ。見学のときに確認したいのは、保育士の配置人数と、急な延長への対応可否である。料金表だけを見ていても分からない。

もっとも、企業主導型保育の地域枠は空き状況に左右される。地域枠の空きは、いつ、どれくらい出るのか。施設に問い合わせなければ分からず、希望通りに進むとは限らない。無償化の申請窓口や一時保育の予約枠も、自治体や施設によって運用が異なる。ここで挙げた数字を目安にしつつ、最終的な判断は窓口での確認を踏まえて決めることになる。

週の利用日数がまだはっきり決まっていない段階なら、まず一時保育を試しに使ってみるという順番もある。そこで見えてきた必要日数をもとに、企業主導型保育や認可外保育施設一般へ切り替えるかどうかを考えても遅くはない。制度は固定されたものではなく、家庭の状況に合わせて乗り換えられる。働き方が変わるたびに、見直してよいものだ。

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制度の費用だけでなく、0〜3歳から園に通う時期の選択肢を広く見渡したいときの一冊が『子育てベスト100』。育児・教育の論点を100項目に分けて並べた本で、預け先の話もその中に含まれている。

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本記事は情報提供を目的とした参考としての内容であり、公表されている一次情報をもとに2026年9月時点でまとめたものです。特定の施設・制度の利用を推奨するものではありません。制度の詳細や利用条件は自治体・施設によって異なり、内容が変更される場合もあります。実際の利用にあたっては、お住まいの自治体の窓口や利用予定の施設に直接ご確認のうえ、ご判断ください。

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この記事を書いた人

4人家族で妻、息子、娘で関西に新築建てて住んでいます。日々、家族の要望に応えられるように未来に関係しそうなことやお金に関すること調べてこっそり、生活に取り入れています。

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