無償化の先に残る幼稚園と保育園の実費

区役所の子育て支援窓口に、幼稚園と保育園のパンフレットが並んで置かれている。表紙のデザインは違うのに、どちらも同じ「無償化」という文字が大きく載っている。棚の脇の掲示板には、入園説明会の日程がびっしりと書き込まれていた。同じ無償化という言葉の先で、月々の負担まで同じになるのだろうか。

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同じ無償化でも中身が違う

比べる材料は二つに分けると整理しやすい。制度としてどこまでが無料になるのかと、無償化の外に残った実費がいくらかかるのか。前者はこども家庭庁の公表資料が、後者は文部科学省の子供の学習費調査と、保育所の食材料費についての国の通知が答えを持っている。ここではその三つを順に開いていく。

3歳から5歳までの子どもが幼稚園・保育所・認定こども園を利用する場合、利用料そのものは原則として無償化される。こども家庭庁の公表資料は、この無償化について幼稚園にだけ「月額上限2.57万円」という金額を添えている。保育所と認定こども園の側に、上限額の記載はない。

ただし、無償化されるのは「利用料」の部分だけである。通園送迎費・食材料費・行事費などは、これまでどおり保護者の負担になると同じ資料に明記されていた。差がつくのは、まさにこの無償化されない部分の中身であり、幼稚園と保育園では性格がかなり異なる。

月額2.57万円という線には、もう一つ注意点がある。利用料がこの額を上回る幼稚園では、超えた分が無償化の外に出る。さらに、子ども・子育て支援制度の対象になっていない幼稚園では、無償化を受けるための認定や、いったん立て替えて後から給付を受ける償還払いの手続きが必要になる場合もあると、同じ資料が注意を促していた。自分の園がどちらのタイプなのかは、パンフレットの表紙からは読み取れない。

幼稚園と保育園で無償化される範囲と対象外の費用を並べた表(こども家庭庁「幼児教育・保育の無償化概要」を基に作成)
無償化でどこまで無料になるか ※こども家庭庁「幼児教育・保育の無償化概要」を基に作成

教育時間4時間という前提

幼稚園の1日の教育時間は、文部科学省の幼稚園教育要領で「4時間を標準とする」と定められている。平成29年告示の同要領の第1章総則に、そう記されていた。一方、保育所の側には保育の必要量による区分がある。こども家庭庁の新制度の解説によれば、フルタイム就労を想定した保育標準時間の認定が最長11時間、パートタイム就労を想定した保育短時間の認定が最長8時間となっている。

教育時間4時間の幼稚園と、認定によっては最長11時間まで預けられる保育所。この骨格の差が、次に見ていく費用の違いにもつながっていく。

入り口の制度は同じでも、通う時間の設計から別ものだということになる。

朝から夕方まで働く家庭にとって、教育時間4時間はそのままでは足りない。だからこそ、幼稚園を選ぶ家庭の多くが後述の預かり保育とセットで考えることになる。逆に保育所の保育標準時間は就労時間に寄せて設計されているため、延長を相談する場面自体は幼稚園より少なく済むことが多い。

幼稚園でかかる年間の実費

文部科学省の令和5年度子供の学習費調査によると、公立幼稚園に通わせた場合の学習費総額は年間184,646円だった。公立以外の幼稚園では347,338円で、両者の比は1対1.9と示されている。内訳は、公立が学校教育費69,362円・学校給食費15,235円・学校外活動費100,049円、公立以外が学校教育費154,062円・学校給食費35,741円・学校外活動費157,535円だった。同調査の結果のポイントに、この内訳が並んでいる。

公立幼稚園と公立以外の幼稚園の年間学習費の内訳を比べる積み上げ棒グラフ(文部科学省「令和5年度子供の学習費調査結果のポイント」を基に作成)
幼稚園でかかる年間の学習費 ※文部科学省「令和5年度子供の学習費調査結果のポイント」を基に作成

学校教育費の中身を開くと、幼稚園ごとの性格がもっとはっきり出てくる。公立幼稚園の69,362円で最も多いのは通学関係費26,705円で、全体の38.5%を占めていた。通学関係費には交通費だけでなく、制服やかばんなどの通学用品の購入費も含まれる。公立以外の幼稚園では154,062円のうち授業料40,166円が最も多く、次いで通学関係費39,878円という順番だった。

公立幼稚園の学校教育費69,362円の内訳を金額の多い順に並べた表(文部科学省「令和5年度子供の学習費調査結果のポイント」を基に作成)
公立幼稚園の学校教育費の内訳 ※文部科学省「令和5年度子供の学習費調査結果のポイント」を基に作成

公立以外の幼稚園では、学校教育費の中に入学金等15,722円(10.2%)という項目も入っている。この項目には、併願して実際には入学しなかった園へ納めた金額も含まれると調査の注記にある。保育所には、こうした入園時のまとまった支払いという発想自体がほとんどない。同じ「入園」という言葉でも、幼稚園の側には最初の一括払いが構えていることになる。制服や道具の一式をいつ買うのかまで含めて、入園前の数か月に出ていく額は園ごとに開きが大きい。

保育園でかかる年間の実費

保育所の3歳から5歳までの利用料は無償化されているが、給食費は実費として残る。2019年の通知では、副食費(おかず・おやつ等)について、これまで保育料の一部として徴収してきた月額4,500円を目安とする、と国が示していた。内閣府と厚生労働省が出した通知に、その経緯が書かれている。主食費は施設が別途定める実費で、行事費や通園にかかる費用も同じく保護者の負担になる。

保育所の副食費と主食費の決まり方を示す表(内閣府・厚生労働省「幼児教育・保育の無償化に伴う食材料費の取扱いの変更について」を基に作成)
保育所の副食費はどう決まるか ※内閣府・厚生労働省「幼児教育・保育の無償化に伴う食材料費の取扱いの変更について」を基に作成

年収360万円未満相当の世帯と、すべての世帯の第3子以降は、この副食費が免除される。保育所でも、認定された保育時間を超えて子どもを預ける場合は、自治体や施設が定める延長保育料が別途かかる。窓口のパンフレットには、同じ「無償化」の文字の裏にあるこうした実費側の仕組みまでは、あまり詳しく書かれていない。

預かり保育を使うと差は縮む

幼稚園にも、教育時間の前後に子どもを預かる「預かり保育」がある。市町村から保育の必要性の認定を受けていれば、月内の利用日数に450円を掛けた額と実際の利用料を比べて小さいほうが、月額1.13万円まで無償になる。こども家庭庁の同じ資料に、この計算式が示されていた。ほぼ毎日フルタイムに近い形で預かり保育を使うなら、幼稚園でも保育所に近い保育時間を確保できる計算になる。

幼稚園の預かり保育で無償になる額の計算方法を示す表(こども家庭庁「幼児教育・保育の無償化概要」を基に作成)
預かり保育で無償になる範囲 ※こども家庭庁「幼児教育・保育の無償化概要」を基に作成

とはいえ、預かり保育の運用は園によって差があり、長期休みの開所日数まで保育所と同じとは限らない。「うちの園は夏休み中も預かってくれるのか」は、先に確認しておきたい点になる。

園ごとに答えが変わる項目

窓口のパンフレットだけでは、実費の全体像はつかみにくい。見学のときに聞いておきたいのは、給食が主食持参か完全給食か、送迎バスの有無とその費用、行事や制服が学年ごとにいくらかかるか、そして預かり保育や延長保育を長期休みも使えるかどうかだ。

同じ「幼稚園」という看板でも、園によって答えはまったく違う。

給食が週の一部だけで残りはお弁当という園もあれば、送迎バスが遠回りをする代わりに保護者の送り迎えがほとんど要らない園もある。保育所の側でも、延長保育の受け付け時間や土曜保育の実施有無は施設ごとに差がある。学習費調査の数字はあくまで全国の平均であって、園を選ぶときの判断材料はその平均のまわりに散らばっている。

0〜2歳は前提が変わる

0歳から2歳までの子どもについては、幼稚園という選択肢自体がほぼ存在しない。保育所の場合も、この年齢の利用料は住民税非課税世帯だけが無償化の対象になる。それ以外の世帯は、世帯の所得に応じた保育料がかかる。子どもが2人以上いる世帯では、保育所等を利用する最年長の子を第1子として数え、0歳から2歳までの第2子は半額、第3子以降は無償になると、こども家庭庁の資料に書かれている。3歳になった年度の費用だけを比べていると、0〜2歳の間にかかるお金を見落としてしまう。

入りやすさの差もある。幼稚園には入園を待つという発想がほとんどないのに対し、0〜2歳の保育所は地域によって申込みが点数制になり、希望する園に入れるとは限らない。

幼稚園と保育園、結局どちらが家計にやさしいのだろうか。答えは、教育時間をどう使うか、預かり保育や延長保育をどこまで使うか、そして世帯の所得水準によって変わる。無償化という同じ入り口の先にある実費の中身を具体的に並べてから、家庭の事情に合う選択肢を絞り込んでいくのが近道になる。

窓口には、幼稚園と保育所の中間にあたる「認定こども園」の案内も置かれていた。教育時間の枠と保育時間の枠を一つの施設で両方持ち、就労状況が変わっても転園せずに済む仕組みだという。利用料の無償化や副食費の扱いは保育所とほぼ同じ考え方で運用されており、送迎バスや制服の有無など実費側の細部は、やはり施設ごとに確認するしかない。幼稚園か保育所かの二択だけでなく、この第三の選択肢も見学の候補に入れておくと、比較の幅が広がる。

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本記事で紹介した金額や制度の内容は、公表されている統計・通知に基づく一般的な目安であり、個々の家庭の状況を保証するものではありません。実際の費用は自治体や利用する施設によって異なるため、最新の情報は市区町村の窓口や各施設に確認したうえでご判断ください。

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この記事を書いた人

4人家族で妻、息子、娘で関西に新築建てて住んでいます。日々、家族の要望に応えられるように未来に関係しそうなことやお金に関すること調べてこっそり、生活に取り入れています。

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