秋の区役所の子育て窓口に、入園申込みの案内冊子が積み上がる。表紙をめくると、受付期間、不足書類の提出期限、結果通知の発送日と、日付が何段にも並ぶ。園見学の予約はいつ入れるのか、書類はどこから手をつけるのか。順番が見えないまま、日付だけが目に入ってくる。
保育園の入園準備は、10月の申込みから4月の登園初日まで、およそ半年がかりの段取りだ。かかるお金は一度にではなく、3回に分けてやってくる。この記事では、東京都板橋区の令和8年4月入所案内を例に時期を追い、準備品の試算、そして0〜2歳児の保育料が自治体でどれだけ違うかを、国の基準額と一緒に整理する。
申込みは10月、結果は2月
認可保育施設の4月入所は、多くの自治体で一斉申込みの仕組みが取られている。板橋区の令和8年4月入所 認可保育施設申込み案内では、一次申込みの受付期間は令和7年10月21日から11月10日まで。不足書類の提出と希望施設の変更は11月28日まで。一次の結果通知は令和8年2月4日に発送される。二次申込みは11月11日から2月12日まで受け付け、結果は3月13日。三次は2月13日から3月26日までと続く。

自治体ごとに日付は違うが、「10月に一次受付、年明けに結果、3月まで二次・三次」という骨格は共通している。一次の結果通知が2月4日、二次申込みの締切が2月12日。つまり、結果を見てから次の一手を決められる日数は1週間しかない。内定が出なかった場合の認可外保育施設や一時保育の情報は、結果を待つ間に集めておく。
出生前の子どもについても、板橋区は一次・二次申込みを受け付ける特例を設けている。対象は令和7年11月4日から令和8年2月17日の間に出生予定の子どもで、申込み時に母子手帳の分娩予定日のページの写しを添え、出生後2週間以内に出生届出済のページの写しを追加提出する。出産予定日が申込期間と重なる家庭は、この制度の有無を先に確認したい。
お金は3回に分けてやってくる

①申込み時はほぼ0円
10〜11月の申込み段階でかかるお金はほとんどない。お金より時間を使う時期だ。就労証明書は勤務先に発行を依頼してから手元に届くまで数週間かかることがある。締切直前に依頼すると間に合わない。案内冊子が配られたら、その週のうちに会社へ依頼する。
②内定から入園までに準備品 約2万円
2月の内定通知のあと、園の指定サイズに合わせて日用品をそろえる。この分野に公的な統計はないので、量販店の価格帯で試算した。

指定品が少ない園なら2万円前後で収まる。通園バッグ・帽子・スモックが園指定になっている園では、その分が上乗せされて3〜5万円になる。どちらに転ぶかは通う園の方針次第なので、見学のときに「指定品は何点あるか」を聞いておく。内定前に買い進めると、指定サイズと合わずに買い直しになる。園の詳細が分かってから動いても、入園式には間に合う。
③登園後は保育料と実費
3回目が毎月の費用だ。保育料は3〜5歳児クラスは全国で無償になっている。0〜2歳児クラスは住民税非課税世帯が無償で、それ以外は自治体が国の上限の範囲で決める。ここで自治体差が大きく出る。
0〜2歳の保育料は自治体差が大きい
こども家庭庁が示す国が定める利用者負担の上限額がある。3歳未満・保育標準時間の月額は、市町村民税の所得割額で7段階だ。所得割48,600円未満で19,500円、97,000円未満で30,000円、169,000円未満で44,500円。その上は301,000円未満で61,000円、397,000円未満で80,000円、397,000円以上で104,000円になる。これは上限で、実際の額は各自治体がこれより低く設定している。

板橋区はこの例で極端な側にいる。区の案内によれば、令和7年9月1日から全世帯の保育料が無償になった。第1子から対象で、手続きは不要。給食費(副食費)も区民は無料だ。有償で残るのは延長保育料と、行事費などの実費だけになる。同じ0歳児クラスでも、住む自治体によって月0円の家庭と月数万円の家庭が並ぶ。引っ越しを予定している家庭は、転居先の保育料表を先に見ておいたほうがいい。
あなたの自治体では、0〜2歳の保育料はいくらだろうか。保育料の決定通知は前年の所得をもとに算定され、登園開始のかなり近くになって届く。世帯の所得割額は住民税の決定通知書に書いてあるので、自治体の保育料表と突き合わせれば、通知が来る前に見当がつく。保育料の仕組みそのものは保育料はいくらかかるかで整理している。
内定が出なかったときの費用
一次で内定が出ず、認可外保育施設を使う場合は費用の桁が変わる。認可外の月額は施設が自由に決めるので、都市部では月5万〜8万円台の施設も珍しくない。こども家庭庁の幼児教育・保育の無償化の概要によると、認可外を使う場合の国の補助上限は3〜5歳児が月37,000円。0〜2歳児は住民税非課税世帯だけが月42,000円まで対象で、課税世帯には国の補助がない。この上限は2026年10月利用分から引き上げられ、3〜5歳児は月40,300円、0〜2歳児の非課税世帯は月45,700円になる。自治体独自の補助があるかどうかで負担は大きく変わる。二次申込みと並行して、居住自治体の認可外向け補助の有無を調べておく。
つまずくのは書類と日数
つまずきやすい場面は2つに集中する。1つは就労証明書の入手が締切に間に合わないこと。様式は自治体指定で、勤務先の総務や人事が記入する。大きな会社ほど社内の決裁を挟むので、依頼から受け取りまで2〜3週間見ておく。もう1つは、三次募集で内定した場合に通知から入園式までの日数が短く、名前つけと持ち物の準備を大急ぎで進めることになる場合だ。お名前スタンプやアイロンシールは通販だと届くまで数日かかる。内定通知の日に注文する。
名前つけの量は想像より多い。着替え上下5組で10点、タオルとエプロンで10点、コップ・歯ブラシ・袋類・靴で10点前後。おむつ1枚ずつに記名を求める園なら、1日6枚として週30枚が毎週加わる。手書きだと1点30秒でも、初回の30点だけで15分はかかる。スタンプなら1点数秒で済む。内定通知が届いたら、その日のうちに園の持ち物リストを確認し、記名の範囲を園に聞いておく。
きょうだいで別々の園に決まることもある。同じ園を第一希望にしていても、定員の空き状況で内定先が分かれる。きょうだいの在園状況を選考でどう扱うかは自治体ごとに指数表で決まっているので、申込書に該当する記入欄があるか提出前に確認する。内定発表の直後に、園までの経路と所要時間を実際に歩いて確かめておくと、初日に慌てない。
慣らし保育で復職日がずれる
見落とされがちなのが、入園式のあとに待っている慣らし保育だ。多くの園で初日は1〜2時間から始め、1〜2週間かけて通常保育の時間まで延ばす。

育児休業からの復職日を入園式の翌日に設定すると、この期間の送り迎えに無理が出る。復職日を1週間ほど後ろにずらせるかは勤務先との相談になる。在宅勤務や時差出勤は、制度があっても申請から適用まで日数がかかることがあるので、内定が出た時点で就業規則を確認しておく。慣らし保育の途中で子どもが熱を出し、予定どおりに終わらないことも珍しくない。日程は延びる前提で組む。
この期間に頼れる先を、入園前に1つは確保しておく。祖父母が近くにいない家庭は、自治体のファミリー・サポート・センターに登録しておくと、迎えの時間だけ会員に頼める。利用料は自治体ごとに決まっていて、1時間あたり数百円台から1,000円前後が多い。登録には事前の面談や講習が要るので、内定が出てから動くと慣らし保育に間に合わないことがある。申込みの時期に登録だけ済ませておく。
内定後は3つの列で進める
内定通知のあとは、指定品の購入だけでなく、健康診断書、予防接種状況の申告書、緊急連絡先の登録と、入園式までの手続きが続く。全部を一度にやろうとすると漏れる。「書類」「持ち物」「保育料と復職日の確認」の3列に分けて、それぞれ締切を書き出す。
- 書類: 就労証明書(申込前)/健康診断書・予防接種の申告(内定後)
- 持ち物: 見学で指定品の点数を聞く → 内定後に購入 → 入園式の直前に名前つけ
- お金と復職: 保育料表で月額の見当をつける/復職日を慣らし保育の後ろに置く
結局いくら用意しておけばいいのか。準備品で約2万円、指定品が多ければ最大5万円。毎月の保育料は、3歳以上なら0円、0〜2歳は自治体の表で決まり、板橋区のように0円の区もあれば、国の上限に近い額を取る自治体もある。焦って早く買うことより、時期ごとに必要な作業を取りこぼさないことのほうが、出費も負担も減る。
次に読む記事
- 保育料はいくらかかるか: 認可・認可外・無償化の範囲 ― 毎月の費用の内訳と、無償化の対象外になる実費
- 保活はいつから何をするか: スケジュールの全体像 ― 申込みより前の、見学と情報収集の段取り
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入園前後の育児全般で優先順位に迷ったときの総論的な一冊として、加藤紀子『子育てベスト100』がある。項目ごとに整理されていて、園生活が始まる前後に目次から拾い読みしやすい。
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免責事項
本記事の申込期間・結果発表日・保育料の扱いは、東京都板橋区の令和8年4月入所案内と区の公表内容に基づく一例であり、自治体や年度によって異なる。準備品の金額は筆者の試算で、実際の費用を保証するものではない。申込みや費用の判断にあたっては、居住する自治体の最新の公式案内をご自身で確認してほしい。
