9月に入った週末、写真館のショーウィンドウに千歳飴の紙袋がもう並んでいた。七五三の当日は11月15日だが、店頭の飾りつけはすでに二か月以上前から始まっている。当日までに、何をいつ決めれば間に合うのか。
七五三は子どもの成長を祝う行事として広く知られているが、実際に何をするかは家庭ごとに幅がある。
千歳飴が先に並ぶ理由
七五三は、男の子が3歳と5歳、女の子が3歳と7歳に行う地域が多い。数え年で行うか満年齢で行うかは、地域や家庭によって選び方が分かれる。七五三は、平安時代からの複数の通過儀礼が江戸時代にまとまって定着した行事で、3・5・7という奇数は縁起の良い数とされてきた。当日の柱になるのは三つある。神社や寺院での参拝と祈祷、写真館やスタジオでの記念撮影、そして家族での食事会だ。この三つをどこまで丁寧にやるかで、準備の量も費用も変わってくる。写真館が9月から飾りつけを始めるのは、前撮りの予約を早めに動かしたいからだ。
参加する人の顔ぶれ
出張撮影サービスのOurPhotoが、2023年に七五三を実施した先輩ママ・パパ250名を対象に行った七五三最新実態調査2024(調査期間2024年8月5日〜13日)では、参加者は「父母」が96.8%でほぼ全員だった。次いで「母方の祖父母」が35.2%、「兄弟・姉妹」が30.4%、「父方の祖父母」が28.8%と続く。母方の祖父母の参加が父方より多い。実施したイベントの内訳は、「七五三衣装の着用」が85.6%、「神社・お寺での参拝」が62.4%、「スタジオ撮影(前撮り・後撮りを含む)」が61.2%で、この三つを6割以上の家庭がこなしている。

支度が始まる時期
同じ調査によると、準備を始めた時期は「1か月前〜2か月前」が26.4%で最も多く、次いで「1週間前〜1か月前」が20.8%だった。一方、実際にお参りや撮影などのイベントを実施した時期は「1週間前〜1か月前」が25.6%で最多、「前日〜1週間前」が21.6%と続く。実施時期を聞いた設問だけは、七五三当日の11月15日を起点に集計されている。
準備と実施の時期にずれがあるのは、衣装や写真館の予約を先に押さえておき、当日の混雑を避けて動く家庭がいるからだろう。予約を検討する際は、七五三シーズンの9月から11月は写真館の繁忙期にあたるため、希望の週末から埋まっていく。平日撮影や早朝枠なら、直前でも空きが見つかることがある。

費用の内訳を見る
写真スタジオのスタジオキャラットが2025年の相場をもとにまとめた費用の目安(2026年6月改訂)では、内訳が次のように示されている。写真撮影は1.6万円から6万円、衣装代はレンタルか購入か、和装か洋装かで0円から20万円まで幅が広い。神社や寺院に納める初穂料は5千円から2万円、食事会は1人あたり3千円から8千円、内祝いは5千円から3万円が目安だという。
撮影費用はさらに細かく分けられる。撮影料は0円から1万円程度、衣装のレンタル料は無料から1.5万円程度、写真データやアルバムなどの商品代は1万円から8万円程度が一般的な相場とされる。撮影料が無料のスタジオでも、データ購入やアルバム作成で総額が高くなるケースがある。
撮影の方法によっても費用は変わる。スタジオ撮影は2万円から10万円が目安だ。神社や公園などへの出張撮影は2万円から8万円が目安になる。印刷せずデータだけを受け取るプランなら、1.6万円から3万円が相場とされる。衣装にも幅がある。和装は購入で3万円から10万円、レンタルで1万円から5万円という目安が紹介されている。洋装は購入で1万円から5万円、レンタルで5千円から3万円という幅だ。
祈祷を受ける神社は、近所の氏神様を選ぶ家庭と、有名な神社まで足を延ばす家庭とに分かれる。移動費や待ち時間まで含めて考えると、近隣の神社を選ぶだけで交通費と当日の拘束時間の両方を抑えられる。体調不良や悪天候で日程を動かす場合に備えて、写真館やレンタル店のキャンセル・変更規定を予約前に確認しておくと、当日の判断で迷わずに済む。

項目ごとに金額の幅が大きいのは、選択肢の数がそのまま費用差になって表れるためだ。
食事会と内祝いの相場
食事会の費用は会場によっても変わる。ホテルでの食事会は1人あたり5千円〜1万円、レストランは3千円〜8千円、個室居酒屋は3千円〜5千円が目安とされる。人数別に見た概算は、5人で1.5万円〜5万円、10人で3万円〜10万円、15人で4.5万円〜15万円という幅だ。会場を使わず自宅で開き、祖父母や親族と料理を持ち寄る形にすれば、会場費そのものをかけずに済む家庭もある。
お祝いをいただいた相手への内祝いは、贈る相手によって相場が分かれる。親族には5千円〜1万円、友人には3千円〜5千円、近所や知人には2千円〜3千円が目安として紹介されている。品物は、七五三の様子が伝わる写真入りのアルバムやフレーム、価格帯を選べるカタログギフト、名入れの菓子折りなどが人気だという。のし紙には「内祝」と子どもの名前を書くのが基本の書き方だ。

総額はいくらに落ち着くか
同じサイトには、スタジオキャラットが2022年に自社の利用者を対象に行った調査も載っている。そこでは総費用の平均が72,342円だった。内訳では5万円〜8万円が最も多く、8万円〜12万円が続く。5万円以上をかけた家庭は68%を超えたという。一方、OurPhotoの2024年調査では総額の分布が違う。最多は「1万円〜4万円未満」で37.6%だった。次に多いのは「4万円〜7万円未満」で31.6%だ。前年の調査と比べると、「1万円〜4万円未満」で実施した人が5.1ポイント増えている。「4万円〜7万円未満」は12.4ポイント減った。費用を抑える動きが強まっていることがうかがえる。

二つの調査で総額の分布が違って見えるのは、調査対象と時期が異なるためで、単純に比べられる数字ではない。かかった費用が想定通りだったと答えた人は60.4%で、想定より多くかかったと答えた人は20.0%にとどまる。祖父母からの援助はどうだったか。「援助はなかった」が48.0%と半数近くを占め、かかった費用の約1〜3割、約4〜6割を援助してもらったという回答がこれに続く。援助がなかった、または申し出を断ったと答えた人は合わせて56.0%で、半数を超えている。
当日に出てくるつまずき
OurPhotoの調査では、七五三で大変だったこととして「子どもの機嫌を損ねずにイベントをこなすこと」が44.4%で最も多く挙げられた。「子どもが慣れない着物や袴、草履などで過ごすこと」が37.2%、「七五三当日のスケジューリング」が29.2%、「衣装の選定、手配」が28.4%と続く。自由回答では、着物に慣れさせるため事前に何度か着せる練習をした、動きやすい靴を別に持って行った、写真を嫌がらないよう自宅で撮影の練習をしたといった声が寄せられている。当日いきなり本番を迎えるより、こうした準備を挟むほうが、子どもの機嫌を保ちやすくなる。

準備して良かったものの1位は「子どもの移動用の履き慣れた靴」で51.2%だった。2位と3位には、好きなお菓子やジュース、着替え用の服が並ぶ。どれも当日の主役ではないが、機嫌が崩れたときの立て直しに効いている。撮影したデータの使い道は、写真プリントが52.4%で最も多く、アルバムやフォトブックにまとめたという回答がこれに次いだ。グッズにした人は2割にとどまる。
費用を抑えた家庭の工夫
費用を抑えることを重視したと答えた家庭に工夫を聞いたところ、「衣装や撮影のキャンペーン(紹介割・早割)を活用した」が61.4%で最も多かった。「父母の衣装は新しく購入しなかった」が42.9%、「お祝いの食事会は控えた」が41.4%と続く。スタジオキャラットのサイトでも、早撮りキャンペーンの割引は撮影料金の30%〜50%オフになる場合があると紹介されている。
衣装の手配方法を見ると、レンタルが70.4%を占め、購入とおさがりが同率で並ぶ。ヘアメイクや着付けは、写真スタジオでまとめて仕上げてもらったという回答が46.8%で最も多く、自宅で両親や親族が仕上げたという回答がこれに次いだ。衣装のこだわりポイントの最多は「子どものパーソナルカラーや顔タイプを意識した」で27.2%。父母や親戚が七五三のときに着用した思い入れのある衣装を着せた、事前にSNSでロールモデルを探してそれに寄せた、という回答が続く。レンタルか購入か、支度を任せるか自宅で済ませるか。この二つで当日の朝の時間の使い方は大きく変わる。
衣装をどこまで自前で揃え、支度をどこに任せるか。いつ動くか、何にいくらかけるか、当日の負担をどう減らすか。この三つの基準を先に決めておくと、七五三の準備は進めやすくなる。
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ここで挙げた金額は、各社が公表した調査と相場表から引いた目安にすぎない。写真館や神社への支払いは地域・店舗・時期で幅が出るため、この記事の数字が個々の見積もりに当てはまることを保証するものではない。契約前に複数のプランを取り寄せ、家庭の事情に合わせてご判断いただきたい。
