結婚1年目に見直す固定費

結婚から1年たった9月、新居の郵便受けに三つの封筒が重なって届いた。生命保険会社からの契約継続のお知らせ、動画配信サービスの値上げ案内、そしてスマホ会社からの「ご契約から1年」のメール。一つひとつは数百円から数千円の話だが、三つ並べて見た瞬間、「これ、結婚する前から入っていたやつだよね」という声が聞こえてくる。

まだ半袖で過ごせる残暑の中、テーブルに広げた封筒はどれも見覚えのある会社名だった。

目次

更新の知らせが重なった月

結婚したときに決めたのは、住む場所と家賃、それぞれの通信契約をそのまま持ち込むこと、生命保険は「あとで見直せばいい」という一言で先送りにすること、動画配信サービスは二人とも別々に契約していたのを特に統合しないことだった。新婚のあわただしさの中では、それで十分に思えた。引っ越しの手続きと式の準備が重なる時期に、固定費の中身まで見直す余力は残っていなかった。

1年が経って重なった三つの通知を並べると、月々の支払いの見取り図がようやく見えてくる。生命保険は月々の保険料だけが記載され、加入時の書類は引っ越しの荷物のどこかに紛れたままだった。動画配信サービスは値上げの案内が来ても、どのプランに入っていたかを即答できない。スマホの契約も、割引の期限が切れて通常料金に戻る通知だと、あとで気づいた。

結婚前の一人暮らしの頃に決めた契約は、当時の生活に合わせて選んだものだ。一人分の部屋の広さ、一人分の通信量、一人分の保障額。二人になった今の暮らしに、その設定がそのまま合っているとは限らない。契約時の担当者も、独身時代の暮らしを前提に説明していたはずで、結婚後の見直しを促す通知は基本的に来ない。届くのは「更新します」という事務的な案内だけだ。

結婚時に持ち込んだ3種類の契約を示した概念図。※概念図(実測データではありません)
結婚時に持ち込んだ3種類の契約 ※概念図(実測データではありません)

更新の知らせだけを先に読んで、契約の中身まで思い出せるだろうか。生命保険の証券がどこにあるか、動画配信サービスが何のプランだったか、即答できる人は少ないはずだ。契約した本人でさえ、半年もすれば細部を忘れる。それが二人分となれば、覚えていられる情報量はさらに減る。

動いても大きくは変わらない

最初にやったのは、目についた動画配信サービスを1つだけ解約することだった。月額1,500円ほどの節約になったが、まだ2つの配信サービスが残っている。片方は結婚前から契約していたもの、もう片方は同棲を始めたときに新しく入ったもので、見るジャンルがほとんど重なっていた。1つ解約しても、残った2つの重なりには気づかないまま次の作業に移ってしまった。

次に試したのは、スマホと自宅の回線をまとめて契約すれば安くなるという広告を見て、まとめ先の窓口に電話をかけたことだった。担当者の説明を聞くと、確かにセット割の金額は小さくない。ところが、まとめた場合の割引額よりも、それまで別々に受けていた家族割の割引額のほうが大きく、乗り換えると却って月800円ほど高くなることが分かった。広告の「まとめてお得」は、元の契約次第で成立しない。

電話を切ってから、担当者に伝えていた条件が自分の契約だけだったことに気づいた。もう一人の契約内容は、口頭で聞いた覚えのままで、正確な金額を伝えられていなかった。単独で動くと、比較の材料そのものが半分しかそろわない。

2つの対処を終えて、月の支払いを見直しても、思ったほど下がっていなかった。目についた1件だけを直す進め方では、重なっている契約全体には手が届かない。

下がったのは、解約した1件分の1,500円だけだった。乗り換えをやめて避けた800円は、増えなかったというだけで、減ってはいない。

2人分を1枚に並べる

動いても大きく変わらなかった理由は、片方だけを見ていたからだった。契約書とマイページのスクリーンショットを1枚の表に集めて、初めて全体が見えた。片方が把握している契約を、もう片方はまったく知らない、という項目がいくつも出てきた。

表はスプレッドシートに、契約先・月額・更新月・解約条件の4列で作った。埋めていく途中で、更新月の欄が2人とも「分からない」で止まる項目が3つあった。月額だけなら請求書を見れば分かるが、解約の条件は契約時の説明書か公式サイトの規約まで戻らないと出てこない。表を作る作業そのものに、休日の午後をまるごと使った。

契約を並べる4つの列と、埋まらなかった欄を示した概念図。※概念図(実測データではありません)
契約を1枚に並べた4列と、埋まらなかった欄 ※概念図(実測データではありません)

表にして分かったのは、生命保険が2件重なっていたことだ。結婚前にそれぞれが入っていた医療保険に、独身時代の死亡保障がそのまま乗っていた。配偶者ができたことで受取人を書き換える機会はあっても、保障の額そのものを見直す機会は一度もなかった。

保険の証券を並べて読み比べると、同じような入院給付金がどちらの保険にも入っていて、片方はほとんど使わずに済む保障だと分かった。担当者から勧められたときの説明を思い出すと、独身の生活を前提にした保障内容がそのまま残っていたのだと腑に落ちた。結婚を機に保険を見直したつもりでいたが、実際に変えたのは受取人の名前だけで、保障の中身には手を付けていなかった。

もう1つは通信費の差だ。片方は大手キャリアの家族割プランを使い、片方は格安SIMのままで、同じデータ容量に対して月3,000円近い開きがあった。契約した時期がずれていたので、比べる機会自体がこれまで一度も無かった。並べてみて初めて、同じ条件で選び直せることに気づいた。

契約を並べ直す

総務省「家計調査 家計収支編 2025年平均」によると、二人以上の世帯のうち世帯主が40歳未満の世帯の消費支出は月平均299,100円だった。通信費のほうは二人以上の世帯全体で月11,672円だった。これは世帯単位の金額で、スマホ代だけでなく固定回線も郵便も含んでいる。二人分のスマホ代だけでこの額に届いてしまうなら、通信の中身を一度見る価値がある。

家計調査2025年平均の消費支出と通信費を並べた表。※総務省「家計調査 家計収支編 2025年平均」を基に作成
家計調査2025年平均の参照値(二人以上の世帯) ※総務省「家計調査 家計収支編 2025年平均」を基に作成

重複していた生命保険の一方を解約し、通信費は家族割の対象を格安SIM側に合わせて選び直した。動画配信サービスはジャンルの重なりを確認して1つに絞った。並べ替えの手順そのものは固定費の見直し、効果が大きい順に並べるとどうなるかに書いた4ステップと同じで、着手しやすい通信・サブスクから先に動き、保険はそのあとに回した。手続きの順番を決めておくと、どちらが何を担当するかで揉めずに進められる。

役割は契約している側が窓口に連絡し、もう片方は表の更新だけを担当することにした。同じ休日にまとめて片づけようとすると、片方が電話で待たされている間もう片方は手が空いてしまい、逆に効率が落ちる。連絡する順番を1日ずつずらし、平日の夜に1件、次の平日の夜に1件、というペースで進めた。

半年前に契約した内容を、今すぐ言えるだろうか。言えないなら、それは重なっていても気づけない契約がまだ残っているということだ。

点検日を先に決める

見直しの結果、月あたりの固定費は約9,000円下がった。生命保険の重複を解いた分と、通信費を選び直した分がほとんどで、動画配信サービスの整理はそのうちの一部に過ぎない。

見直しの内訳と合計を並べた表。※本文の金額を基に筆者が試算
見直しの内訳と合計(月あたり・試算例) ※本文の金額を基に筆者が試算

金額そのものより変わったのは、契約を1枚の表で共有する習慣だ。結婚前からの契約は、どちらか一方しか内容を把握していないことが多い。1年に一度、結婚記念日を「契約を並べる日」に決めておけば、重なりに気づくタイミングを更新通知に頼らずに作れる。

作った表は、そのまま消さずに残してある。次に見直すときは、契約を探すところからではなく、前回の表を開いて更新月の列を確認するところから始められる。ゼロから洗い出す1回目と、更新するだけの2回目とでは、かかる時間がまるで違う。

助言できるとすれば、金額の大小より先に、二人の契約を1枚のリストに並べる日を決めることだ。安くする方法を探す前に、何が重なっているかを見る場面を先につくる。安さだけを追いかけた電話1本より、表を作った休日の午後のほうが、結果として大きく効いた。次の点検日はもう来年の結婚記念日に決めてある。

三つの封筒が重なって届いたあの日がなければ、この点検はもっと先延ばしになっていたはずだ。きっかけは向こうから勝手にやってくるものではなく、封筒を1つずつ開けて中身を読むところから始まる。読まずに束ねて引き出しにしまう癖のほうが、実は一番のコストだったのかもしれない。

来年の秋、郵便受けの封筒はもう静かに積み重ならないはずだ。

次に読む

保険の相談窓口(PR)

契約が重なっているかどうかを二人だけで判断しにくいときは、無料で相談できる窓口もある。面談は対面とオンラインのどちらかを選べて、複数社の商品を横に並べて条件を見比べられる。

【PR】

みんなの生命保険アドバイザー(無料の保険相談・対面/オンライン)

本記事の固定費の見直し額は、契約内容の一例を基に筆者が試算した参考例であり、実際の効果は契約先や利用状況によって異なる。特定の保険商品や通信会社を推奨するものではなく、見直しの判断はご自身とご家族の契約内容を確認したうえで行っていただきたい。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

4人家族で妻、息子、娘で関西に新築建てて住んでいます。日々、家族の要望に応えられるように未来に関係しそうなことやお金に関すること調べてこっそり、生活に取り入れています。

目次