電気とガスの契約先、四つの物差しで決める

3月、引っ越しの片づけがひと段落したころ、新しい住まいでの電気とガスの契約をどう決めるかという課題が残っている。電力もガスも、今はどの会社を選ぶかを消費者が決められる時代になった。聞き慣れない社名が並ぶ料金プランのチラシを前に、何を基準に決めればよいのかで手が止まる。

電力の小売全面自由化は2016年4月に始まった。ガスの小売全面自由化は、その1年後の2017年4月である(資源エネルギー庁「実施から1年、何が変わった?ガス改革の要点と見えてきた変化」)。自由化から10年前後が経ち、選べる事業者の数は増えた。選択肢が増えたぶん、何を基準に選ぶかという判断は難しくなっている。

目次

選択肢と制約を整理する

契約の見直しを考えるとき、選択肢は大きく三つに分かれる。一つ目は、今契約している地域の電力会社・ガス会社をそのまま続けること。二つ目は、新電力・新ガス事業者が示す固定単価のプランに切り替えること。三つ目は、卸電力市場の価格に連動して単価が変わる市場連動型プランに切り替えることだ。

電気・ガスの契約見直しにおける三つの選択肢と制約を示した図
見直しの三つの選択肢と、先に効く制約 ※概念図(実測データではありません)

選択の前には、制約も確認しておきたい。賃貸か持ち家かによって、スマートメーターの設置状況が異なる場合がある。契約期間に縛りを設けているプランも存在する。供給エリアの外にある事業者は選べない。都市ガスの導管が来ていない地域では、都市ガス会社への切替そのものができない。都市ガスの普及率は全国で約50%にとどまり、導管はいまも国土面積の6%弱にしか敷設されていない(資源エネルギー庁「実施から1年、何が変わった?ガス改革の要点と見えてきた変化」)。自分の住まいがどの制約に当てはまるかを、最初に確かめておく必要がある。

切替にかかる手間を確認する

手間の面はどうか。資源エネルギー庁によると、切替の申し込みは、切り替え先の事業者に対して行う。現在契約している会社への解約手続きは、消費者の同意があれば、切り替え先の事業者が代行できる(資源エネルギー庁「電力会社を切り替えるには?」)。標準的な期間は二通りある。スマートメーターへの交換工事が必要な場合はおよそ2週間。工事が不要な場合はおよそ4日とされている。

電力会社の切替に必要な標準的な期間を工事の有無別に示した表
切替に必要な標準的な期間 ※資源エネルギー庁「電力会社を切り替えるには?」を基に作成

申し込みには、検針票に記載された「お客さま番号」と「供給地点特定番号」が必要になる。番号が見つからない場合は、現在契約している会社に直接問い合わせれば確認できる。工事が発生しない住まいであれば、思ったより短い期間で切替が完了する計算になる。都市ガスの自由化から10か月ほどの時点、2018年1月31日までの契約先の切り替え申込は全国で約68万件だった。うち近畿が約33万件で、全体のおよそ半分を占める。同じ事業者の中で規制料金から自由料金へ変更した件数は、別に累計約99万件(2017年10月時点)と示されている(前掲・資源エネルギー庁「実施から1年」記事)。切り替えは地域によって進み方がかなり違う、というのがこの数字の読み方になる。

ガスの新規登録事業者は51社にのぼり、家庭向けの供給を予定していたのは16社だった(2018年2月8日時点、前掲・資源エネルギー庁「実施から1年」記事)。数だけを見れば選択肢は多い。ただし、実際に自分の住まいへ供給できる事業者は、地域とインフラの制約でさらに絞り込まれる。チラシの数がそのまま選択肢の数にはならない。

契約前に確認すべき9項目

資源エネルギー庁は、契約前にチェックすべき項目を9つにまとめて公開している(資源エネルギー庁「電力・ガス自由化 切替え契約時は、ココに注意!」、2017年12月12日公開)。国の登録事業者かどうか。供給開始の時期。契約期間の始期と終期。契約期間満了後の更改手続き。毎月の料金の算定方法。追加工事が必要な場合の費用負担。料金割引の金額と対象期間。契約期間内に解約する場合の制約。解約手数料の有無と金額。これが9項目の中身である。

契約前に確認すべき9つのチェック項目を示した図
契約前に確認すべき9項目 ※資源エネルギー庁「電力・ガス自由化 切替え契約時は、ココに注意!」を基に作成

この9項目を書面で確認してから契約するようにと、同庁は呼びかけている。口頭の説明だけで済まされそうになったときは、「書面でください」と伝えればよい、とも案内されている。

市場連動型プランのリスクを確かめる

三つの選択肢のうち、判断が特に難しいのが市場連動型プランである。国民生活センターには、電力・ガスの契約に関する相談が寄せられ続けている。電気関連の年度別件数はこうなっている。2014年度27件、2015年度981件、2016年度1,307件、2017年度1,953件。2018年度4,994件、2019年度6,087件、2020年度6,182件。増え方が緩んだのは、直近の1年である。ガスは動きが違う。2016年度109件から2019年度876件まで増えたあと、2020年度は635件へ減った(国民生活センター「電力・ガスの契約内容をよく確認しましょう」、2021年8月13日発表)。同じ発表には2021年度として電気1,539件・ガス203件も載っている。ただしこれは4〜6月の3か月分で、年度の合計と直接は比べられない。

電力・ガスの契約トラブルに関する相談件数の年度別推移を示した表
電力・ガス契約に関する相談件数の推移(2021年8月13日発表) ※国民生活センター「電力・ガスの契約内容をよく確認しましょう」を基に作成

同じ発表には、具体的な相談事例も載っている。単身赴任で2軒分の電気料金を負担していた人が、複数社を比較したうえで市場連動型の電力会社に契約を変更した。その3か月後、電気料金が高騰し、月20万円ほどの請求になったという(2021年5月受付)。急激な値上がりは聞いていなかったが支払わなければならないのか、という相談内容である。市場価格が下がっている時期は割安になる。価格が跳ね上がった局面では、想定を超える請求になり得る。上振れの幅だけが読めないという、この非対称さが市場連動型の性格だ。

何を優先するかを先に決める

ここまでの情報を踏まえて、判断基準を先に決めておく。基準は四つに絞った。月々の料金の見通しが立てやすいか。契約期間内に解約した場合の制約はどの程度か。切替にかかる手間はどれくらいか。価格変動時の上振れリスクをどこまで許容できるか。この四つである。

電気・ガスの契約先を選ぶ際の四つの判断基準を示した図
契約先を選ぶときの四つの物差し ※概念図(実測データではありません)

四つのうち、どれを優先するかは家庭の状況によって変わる。転居の予定がある家庭なら、解約の制約を重く見たほうがよい。日中の在宅時間が少なく、電気の使用時間帯を市場価格の安い時間にずらしやすい家庭なら、市場連動型のリスクを許容できる場合もある。逆に、在宅時間が長く使用量が安定している家庭では、固定単価のプランのほうが見通しを立てやすい。基準に優劣はなく、家庭ごとに重みづけが変わるだけだ。

三つのプランを並べ直す

四つの基準に、三つの選択肢を当てはめてみる。現状維持は、料金の見通しやすさでは安定している。他社の割引プランと比べると、割高になっている場合もある。固定単価プランへの切替は、料金の見通しやすさと上振れリスクの低さを両立できる。契約期間の縛りや解約手数料の有無は、事業者ごとの確認が欠かせない。市場連動型プランは、市場価格が低い時期は最も安くなる可能性がある。上振れリスクは、三つの中でもっとも大きい。

三つの契約選択肢を四つの判断基準で評価した図
四つの物差しで見た三つの選択肢 ※概念図(実測データではありません)

資源エネルギー庁の注意喚起には、こんな事例もある。「インターネットと電気のセット割がある」と勧誘されて契約したものの、夜間に多く電気を使う家庭だったため、以前の契約のほうが安かったと後から判明した。元の電力会社に戻そうとしたところ、以前のプランへの再加入はできなかった。結果として、月額1,000円ほど高い料金を払い続けることになったという。同庁は解説の中で、オール電化のように使用パターンが偏っている家庭では、思っていたほどメリットが出なかったり逆に割高になったりする場合があると注意を促している(前掲・資源エネルギー庁「切替え契約時は、ココに注意!」)。割引の見出しではなく、自分の家の使い方に当てはめて確かめる。この手順を省かないことが、ここでの教訓になる。

切り替えたあとに残る仕事

四つの基準を並べたうえで、多くの家庭にとって現実的な落としどころは、固定単価プランへの切替を軸に検討することだろう。市場連動型プランは、価格変動を許容できる家庭にとっては選択肢になり得る。ただし、上振れ時の請求額を試算せずに契約するのは避けたい。契約前の9項目チェックを書面で確認する。特に解約手数料と契約期間の欄には、目を通しておきたい。

切替後にすべきことも残っている。最初の検針で、想定していた料金と実際の請求に差がないかを確かめることだ。差が出ている場合、算定方法の理解が違っていた可能性がある。早い段階で事業者に問い合わせれば、次月以降の見通しを修正できる。

契約は一度決めたら終わりではない。

生活の変化に合わせて見直してよいものである。転居、家族構成の変化、在宅時間の変化——見直しの節目は、暮らしの中に何度も訪れる。そのたびに、今回整理した四つの基準に立ち返って考え直せば、判断の軸がぶれにくくなる。次の検針票が届いたときが、最初の見直しの合図になる。

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本記事は情報提供を目的とした参考としての内容であり、公表されている一次情報をもとに2026年9月時点でまとめたものです。特定の事業者・料金プランの契約を推奨するものではありません。料金プランや手続きの内容は事業者によって異なり、変更される場合もあります。実際の契約にあたっては、各事業者の公式サイトや書面の契約条件を直接ご確認のうえ、ご判断ください。

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この記事を書いた人

4人家族で妻、息子、娘で関西に新築建てて住んでいます。日々、家族の要望に応えられるように未来に関係しそうなことやお金に関すること調べてこっそり、生活に取り入れています。

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